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最後の恋は甘めの味で

第14章 逃げる

私の様子を見て上條くんは、やっぱりと声を漏らした。


「君島さん、鋭そうですもんね」


上條くんは完敗というように苦笑いを浮かべた。


なんでも完璧にこなす彼を負かし、いい気分になる。


「大将、ビール瓶お願い」


奢ってもらう分際で瓶でビールを頼む。


「ちょ.....君島さん......」

「なに?大丈夫よ。少しくらいは出すから」

「いえ、そうじゃなくて......明日も会社だし、その.....」


今日は折り返し地点である水曜日。


木、金と続く平日を気にしての上條くんの言葉。


そこでピンと来た私は言葉を発する。


「大丈夫よ。私は暁ほど弱くないの」


ピクリと反応し、ぽかーんとする上條くんを置いて私はビール瓶を受け取った。


「上條くん、私に隠し事なんて通用しないわよ?」


にやりと笑い言い張る私にもう一度上條くんは苦笑いを浮かべた。

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