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しのぶ

第7章 7・しのぶ

 
 意識が混濁する程交じり合い、果てるまで精を吐き出し、とうとう志信は元康の腕の中で気を飛ばす。まるで朽ち果てたかのように眠る志信を抱きしめながら、元康は呟いた。

「お帰り、しのぶ」

 目覚めた時、志信は生まれ変わっている。元康は、志信が人としての発する一言はなんだろうと思案し、おそらく小言だろうなと結論づけて苦笑いした。







 徳川家と交渉を続ける輝元へ、元康の噂が届くのはそう遠い話ではなかった。

「志信が、戻ってきた?」

 ジュストの報告を聞き、輝元はとても年相応には見えない若い目を真ん丸にする。ジュストは怒りに任せ、声を荒げて顛末を聞かせた。

「――そしてその助六に罪を押し付けて、裏切り者は戻った! 小川家の人間は皆言ってる、志信が憎いと!」

「……そっか、そうなんだ。元康は、志信を許したんだ」

「元康が許しても、ジュストは許せない! 輝サマ、斬首の許可をください! ジュストが荒谷に行って、デーモンを成敗し元康の目を覚まさせてきます!」

 ジュストは鼻息荒く腕捲りするが、輝元は反して返事もなく考え込む。
 

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