
霧霞ノ桜蕾
第2章 滴ル血ノ一滴マデ*近親相姦/血縁/禁断
「──ただいま…」
真っ暗な廊下に光を灯し
日頃呑まない酒でふらふらになった身体を壁に預けながら、リビングへ足を運ぶ。
─晴樹はもう…寝たかな。
真っ暗だし……。
ぽすっと、ソファーに座り
重い身体を休める為横にする。
「……あつい」
ネクタイを緩め、ボタンを3つ程開ける。
ねむい…。何かもう、色々と死にそう。
ふわりと香った、女物の香水。
先程までの悪夢を思い出す。
…──やっぱり、女の人は苦手だなぁ…。
何であんなに……、………はぁ…。
─凪咲は、あんなキャッキャうふふなタイプでも無かったし、
そんな人でも無かったから別だけど…。
それ以前に、妻…だったし…。
そんな事を思いながら、目を瞑る。
その時ふ、と感じた─懐かしい香り。
「──父さん」
「─っ、はる、き──…」
暗闇の中佇む、ひとりの少年。
少年─晴樹は暗闇に居ても分かる程の綺麗過ぎる笑みを浮かべ、
ゆっくりソファーに寝そべる僕に近付いて来る。
それが何処か…威圧感が滲み出ていて。
反射的に身体を起こし、晴樹と向き合う形に成る。
「えっと晴樹?どうか、した─?」
「──何処、行ってたの」
「え?」
質問に質問を返され、少し戸惑う。
「かい、しゃの人達と、ただの飲み会…だよ?
…あ、いや別に、晴樹が思ってる様なやましい事は…─」
「やましい事でしょ?そんな…女物の香水、プンプンさせて。
ベタベタされたんじゃないの?
…あ、もしかして、満更でも無かったりする?」
そう嘲笑う様にして言い、
ソファーに座った僕を見下ろす。
──冷たい視線。
胸が、ずき…と痛んだ。
