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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第7章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】

「ありがとうございます。でも、大丈夫です。こう見えても、これくらい平気ですから」
 少し考えて付け加えた。
「それに、京屋の旦那さまに大根なんて似合いませんよ」
 これはほんの冗談のつもりだったのだが、市兵衛はまったく別のことを言った。
「小紅さんは一人暮らしでしたね?」
「はい? ええ、そうですけど」
 小紅はまたもや市兵衛の話が思いもかけない方に逸れたので面食らった。

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