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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第7章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】

「大根、大根~。取れたての大根」
 声高に呼ばわりながら歩いていく大根売りを見かけ、小紅は呼びかけた。
「おじさん、大根をちょうだい」
「へい、毎度ありぃ」
 中年の大根売りは愛想よく大根を渡してくれる。籠も持っていないので、小紅は三本の大根を小脇に抱えた。
「持ちましょうか?」
 市兵衛がすかさず訊ねてくれ、小紅は微笑んだ。

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