テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第7章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】

「あなたは」
 予期せぬ場所で逢ったその人は京屋の若い主人であった。
「これは奇遇ですね」
 市兵衛は笑うと、一礼してから自分も賽銭を入れて両手を合わせて何事か祈っていた。先にさっさと帰るのもあまりにも無愛想な気がして、小紅は帰るに帰られず、その場に立っていた。
「済みません、お待たせしました」
 市兵衛は微笑み、小紅をまじまじと見つめた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ