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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第4章 【残り菊~小紅と碧天~】 流星

 小紅は端からお見通しだよと言われ、頬を紅くした。何だか自分が自意識過剰のように思えたからだ。
「ごめんなさい。別にそういうわけじゃ」
「まっ、そんなこたァ、どうでも良いさ。じゃ、邪魔するぜ」
 栄佐は自分で戸を開け、中に入ってくると、早速上がり込んだ。同じ長屋なので作りも同じだろうに、物珍しげに室内を見ている。
「若ぇ娘の住まいにしたら、何か殺風景だな」
 箪笥や鏡台、家具らしきものはまったくない。小紅は笑った。

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