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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第4章 【残り菊~小紅と碧天~】 流星

 この声は。小紅は慌てて三和土に降り、心張り棒を外した。腰高障子を細く開けると、向こうに立っているのは案の定、栄佐であった。
「栄佐さん」
「ガキじゃあるめぇし、まさか布団に潜り込んでいたなんて、言わねぇでくれよ」 
 栄佐は例の人をからかうような口調で言う。
「だって、引っ越しとか色々あったから」
 小紅は言い訳にもならない言い訳をし、栄佐が続けた。

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