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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第4章 【残り菊~小紅と碧天~】 流星

 小紅はとうとう布団から這い出た。夜着の上に袢纏を羽織る。これは亡き武平の形見だ。いまだにこれを着ると、武平の匂いがする。まるで武平の腕に抱かれているみたいに心が落ち着くのだ。
 しばらく武平の想い出に浸ってから、小紅は仕立物の続きを始めた。とにかく、これをきちんと仕上げて最初の関門を突破しなければならない。何せ、今後の生活の糧がかっているのだから。

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