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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第4章 【残り菊~小紅と碧天~】 流星

 沙吉は小紅より二つ下の十三、まだまだ虫を追いかけ回して遊びたい年頃の子どもだ。それでも二、三年内には似合いになるだろう。今すぐでなくとも、いずれ二人を娶せて扇屋を託したいとまで言ってくれた。
―夏にはお紀代が嫁いで淋しくなるし、気心の知れたお嬢さんがずっといてくれたら、願ったり叶ったりなんだけど。
 ありがたい申し出だといえた。だが、小紅は丁重に辞退した。まだ十五歳の小紅には、嫁ぐだとかは遠い未来の話のように思える。

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