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「再会」と呼べる「出会い」

第20章 見送る人

「さ えきさーん」



「5時限目始まりますよ〜」

え 


キーンコーンカーンコーン

や  やば!!


「す すみません私!!」

図書室で本を読みながら
寝てしまったようだ。

「仕方ないですね
 戻しておきますから
 行ってください」

「本当すみません!!
 お願いします」

司書の松井先生に頭を下げ、
私は図書室を後にした。



「セーフ
 どこ行ってたのよミカ」

「図書室
 居眠りしちゃってた」

…あれ

「リョウ君は?」

珍しい。
教室にいないなんて。
今日は休みじゃなかったよね。

「早退したって」

「へー…珍しい」

どうしたんだろ?
体調不良じゃないよね。
学校休んだところ一度も見たことない。


放課後、
調理準備室に行くと奥井先生が待っていた。

「今日は隠土先生が御用があるそうで
 早退なさったので
 料理部は調理以外の活動で
 お願いしたいの」

「え あ はい
 分かりました」

「ごめんね
 私が見れたらいいんだけど
 コンテストの準備を
 手伝わなくちゃいけないから」

「そうでしたね
 私も被服部のドレス楽しみです!」

奥井先生が顧問を務める被服部は今、
三年生を中心にして
毎年開かれるドレスのコンテストに向けて、
最も忙しい時期だった。
海外ブランドで働いていた経験のある
奥井先生が顧問になってから
みんなめきめき腕が上がって
入賞の常連になっていた。


仕方ないなぁ

私は調理準備室の中に入り、
冷蔵庫を確認した。
本当は今日、
チェリーパイを焼く計画だった。

誰かがさくらんぼを
沢山持ってきてくれたのだ。

…あれ

誰だっけ?

さくらんぼでパンパンになった袋を取り出す。
明日から休みだしみんなで分けよう。



「何これ」

ジャムのビンにジャムではないものが

「塩辛?
 え なんで??」

隠土先生が入れたのかな?
取り敢えず冷蔵庫に戻した。

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