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「再会」と呼べる「出会い」

第19章 廃墟と花嫁

「助かった
 これでなんとか動ける
 …続き
 帰ったらしようね
 また随分魅力的な格好」

わわ

次朗君はそう言うと
軽く私の頬に口付けた。


ドキドキ
しちゃうけど、
だめ…
今はそれどころじゃない。


「次朗君 あのね」

私は窓の外を
視線で指した。


「百瀬エミ?」


エミはしゃがみこみ、
顔を膝に埋めていた。


「会った時
 また吸精鬼を
 付けられてて
 今は取れたんだけど」

「ん?取れた?
 …あ これか」

次朗君は
聖書を摘まんで持ち上げ
私が潰した吸精鬼を
確認した。


「君が?」

「う…うん
 まさか聖書とは
 思わなくて」

「かえって
 それが良かったんだね
 …あち」

聖書を摘まんでいた
部分の指が
火傷している。

「大丈夫?」

「大丈夫だよこれ位
 吸精鬼が
 自分から出てきたの?」

「それがね
 あそこに百合のブーケが
 あるでしょ?
 エミがその匂いを嗅いだら
 急に様子がおかしくなって」

「…」

次朗君は
百合のブーケに近付き、
触れようとして
手を引っ込めた。


「アゼットさんが
 私にくれたの」

「え
 アゼットに会ったの?
 何もされなかった?!」

次朗君が
慌てて私の肩を掴む。

「…服
 着替えさせられただけ」


それを聞くと、次朗君は
私の身体をあちこち見た。

「あー…ほんとだ
 服だけだね
 服そのものも特に…
 もしかしてこれって
 ウエディングドレス?」

「み…みたい」


次朗君の目が据わった。


「…あの野郎」

次朗君の唇から
いつになく低い声が漏れる。


「あのね
 アゼットさん
 一瞬だったけど
 私のことを逃がそうと
 してくれたんだよね」

「え あいつが?」

「うん
 『逃げます?』って
 聞かれたの
 私そういう事だと思った」

「…」


次朗君は何だか
少し混乱しているようだった。

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