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「再会」と呼べる「出会い」

第12章  イカ祭りの誘惑

車を降りると、近所の家々から
晩飯の支度をする匂いがして来た。

うちは何にしようかな…。
あいつ、昼はイカを
食いまくったんだろうな。


「ただいま」

「おっかえりー!」

次朗がにこやかに
台所から顔を出した。

「飯、丁度出来るところ!
 それとも先にお風呂?
 …なーんて。
 なんか新妻になった気分」


…おいおい
テンション高ぇなぁ


飯、作ってくれたんだ。

「ありがとな。
 香田に聞いたぞ。
 イカ祭り、佐伯に会えたんだって?」

「うん」

で?

「進展はあったか?
 ま、お前の事だから
 いくとこまでいったんだろうけど」

「兄さんらしからぬ下世話な発言だね。
 残念ながら…
 一応俺にも理性はあるんだよね。」


へー… それは意外だなぁ。


…なんて。

実はミズカにも手を出せなかった
という過去がある。

淫魔の血はあっても、
大切な者には理性が働くようだ。


「お これは…」

テーブルの上に、真っ黒い 麺。


「イカ墨パスタだよー。
 あーとこれ! お土産」

昼間イカはさんざん
食って来たんじゃねぇのかよ。
余程好きなんだな。


「ありがと
 …ん? …」


渡された小さな袋から出てきたのは
リアル過ぎる
スルメイカのキーホルダー


「…」

「カワイイでしょ?」

カワイイ… って言うのか?これ

「ありがとなー」

俺は折角なので車のカギに付けた。


「佐伯に引かれなかったか?
 お前のイカ好き」

「全然。
 彼女も実は深海魚が好きだったりで
 お互い楽しく博物館をまわったよ。」

「あの子、そういう趣味あるんだ。
 深海魚ってグロいのが多いだろ?
 なんか真っ先に怖がりそうな
 イメージあるけど。」


…そういやぁミズカも
グロい挿し絵が描かれた医学書とか、
悪魔書とか 平気な顔で見てたなぁ

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