
「君は失恋をして、綺麗になった」
第2章 「なごり雪」
…………
その日の夜
これが最後のチャンス……。
街灯に照らされた
公園の隅にあるベンチで
紺色のコートを着た凛を見つけた。
いつものように読書をする彼を見て
私はしばらく
その姿を目に焼き付けていた。
数分後
『りーんっ』
思い切って声をかける。
この時間に会うのは初めてだったから
凛は顔を上げて
少し驚いた表情を見せた。
「なんだ……
また邪魔しに来たのか」
相変わらず低い、冷めた声。
でも今日はそんな声も
なんだか愛おしいや。
『大丈夫、もう来ないから』
「………⁇」
春でも夜はまだ寒い。
しかも今日の天気は
この季節最後であろう、なごり雪。
地面に触れては消えるその雪のように
今日はあなたが、あなたの声で……
私を、振ってください。
その日の夜
これが最後のチャンス……。
街灯に照らされた
公園の隅にあるベンチで
紺色のコートを着た凛を見つけた。
いつものように読書をする彼を見て
私はしばらく
その姿を目に焼き付けていた。
数分後
『りーんっ』
思い切って声をかける。
この時間に会うのは初めてだったから
凛は顔を上げて
少し驚いた表情を見せた。
「なんだ……
また邪魔しに来たのか」
相変わらず低い、冷めた声。
でも今日はそんな声も
なんだか愛おしいや。
『大丈夫、もう来ないから』
「………⁇」
春でも夜はまだ寒い。
しかも今日の天気は
この季節最後であろう、なごり雪。
地面に触れては消えるその雪のように
今日はあなたが、あなたの声で……
私を、振ってください。
