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溺れる愛

第4章 混沌




いつもより重い気分で教室のドアを開けると、既にお馴染みのメンバーが揃っており、口々に挨拶を交わしながら楽しそうに話している。

それを、何気なく遠いところから見ている気分になった。


「おはよー!昨日は帰り大丈夫だった?」


『おはよう桃花ちゃん。…大丈夫だったよ』



一人で帰ったことを心配してくれている桃花の優しさが暖かかった。


(本当は大丈夫なんかじゃなかった。でも…誰にも言えない…)



チラッと那津の席へ目をやると、彼は相変わらず一人で本を読んでいて、周りの様子など気にした風も無かった。



(誰のせいでこんな気持ちになってると思ってんの?)


那津のその飄々とした態度が、余計に芽依の気持ちを逆なでた。



ガラッとドアを開ける音がして、先生が入ってくると皆散り散りに自分の席へと帰って行く。
それにならって芽依も席に着いた。



「えー、今日は臨時の全校集会がある。
今から学級委員を先頭に廊下に二列に並べよー。」


(学級委員先頭って…)



「新井ー森山ー急げー。」



やたらと語尾を伸ばすのが先生の話し方の特徴だが、呑気なそれが更に芽依をイライラさせた。



『はい。みんな並んでねー』


仕方なく廊下に出てみんなを整列させると



「何その顔。妖怪みたいになってんぞ」



芽依にだけ聞こえるようにボソッと那津が囁いた。



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