
溺れる愛
第21章 波乱の合コン
「え…、それなら俺が──」
「いえ、僕がついていますので。
皆さんは楽しんでいて下さいね」
私は…何も言わずに黙って従っていた。
那津のことを知りたかったから…。
先輩…絶対変に思ってるよね。
ごめんなさい…。
田所さんの有無を言わさない雰囲気に圧され
先輩が黙ったのがわかる。
そのまま私は、酔ったフリをしながら
田所さんに支えられて店を出た。
『あの…もう大丈夫ですから…』
「あぁ、そうだね。ごめんね。」
なかなか離してくれなかった田所さんにそう告げると
やんわりと回された腕が解かれた。
「あ…あそこにベンチがあるから座ろうか?」
『はい…』
促されたベンチに並んで腰掛ける。
夜風がほろ酔いの身体に気持ちよく通っていく。
その風に乗って、田所さんの香水の、いい香りが漂っていた。
「まずは…どこから話そうかな?」
隣で夜空を見上げながら話す彼の顔は、どこか懐かしそうに
だけど少しだけ切なくも見えた…。
