
溺れる愛
第21章 波乱の合コン
ある程度、皆の自己紹介が終わって
最後、とうとう私の番が回ってきてしまった。
こういうの苦手なんだけどな…。
おずおずと立ち上がって、どこに視線を向けていいのかもわからなくて
下を向いたまま自己紹介をした。
『新井芽依と申します…。
宜しくお願いします…。』
うん…私にはこれが精一杯です。
とりあえず乾杯しましょうと誰かが言って
私は頼んでおいたキティーを手にすると
生中を持った仕切り役の男性が乾杯の音頭をとった。
「「かんぱーい!!」」
席の真ん中でグラスのぶつかる音が響き、一口だけ喉に流し込む。
ていうか…さっきから視線が凄いんですけど…。
そう。
目の前にいる田所さん。
ずーっとにこにこしながらこっちを見ていて
なんだか、どうしていいかわからないよ…。
「皆さん同じ会社の方達なんですか?」
さっそく副リーダーが話を振って、男性が答える。
「そうなんですけど、田所さんだけ違うんですよ。
なので、僕たちも田所さんとは初対面なんです」
「へぇーそうなんですかぁ~」
副リーダー…いつもと声が違う気がする。
菜々子ちゃんは品定めでもするかのように
黙って一人一人の会話を聞いている。
こういう一面は私の中で割と良い風に思っている所で、
菜々子ちゃんはハッキリ言う子だけれど
人の話もちゃんと訊ける良い子だ。
だから仲良くしていられる。
そして、男性陣は皆、割と整った顔つきの方ばかりだけれど
群を抜いている田所さんはすかさず女性陣の餌食となり
質問攻めに合っていた。
良かった…。
視線が痛かったから…。
