
溺れる愛
第20章 近付けた喜びと陰
40階建てのビルの最上階から覗く絶景を眺めながら
俺はこの景色を掴むために、ここ数年
死に物狂いで駆け抜けてきた。
全ては自由を手に入れるため…。
本当に欲しい物は、そう簡単に手に入らない。
地位や名誉は努力さえすれば手に入れられる。
でも、好きな女は…
人間の心は努力や金では買えない。
そんな事…もうとっくに理解していたし
諦めたつもりだった。
────会いたかった─────
それは俺だ。
この八年、忘れた日なんて1日たりともなかった。
「アイツ…すげぇ綺麗になってたな」
ぽつりと呟いた言葉は、静かな社長室によく響き
それが自分の耳に返ってきて
なんだか恥ずかしくなって言った事を後悔した。
