
溺れる愛
第17章 社会人編スタート
シャカシャカとシェイカーを振る音が止むと、
グラスには綺麗なピンク色のカクテルが注がれる。
「お待たせしました。
チェリーブロッサムです」
『ありがとう…本当に名前の通り桜の花みたいに綺麗ね』
「今は春ですので、是非」
一口喉に流し込むと、甘酸っぱい味が口の中に広がって
とても私好みの味だった。
『ん…おいしい』
「ありがとうございます」
よくよく店員さんの顔を見ると、この人も割と整った顔をしている。
私ってつくづくこういう綺麗目の人と縁があるなと思うと
真っ先に浮かんでくるのはやはり那津の顔だった。
『はぁ……』
もう、思い出して、気持ちを焦がしても意味なんてないのに…
それに8年も前の事よ?
那津が覚えている訳ないわ。
むしろ覚えていたとしても、どうせ私の事なんて何とも思ってないに決まってる。
もういい加減忘れなきゃ…。
そこで、私はいつもの無意識の癖で
あのネックレスに触れる。
携帯も……どうしようかな…。
処分しちゃってもいいのかな…。
まぁ、私にそれが出来る勇気があればの話なんだけど…。
そしてまた、小さな溜め息が洩れた。
