溺れる愛
第16章 冷雨
あの時那津は確かに遅れて女の子と一緒に店内に入ってきていた。
ネックレスも外した後だったはずだ。
なのにどうしてこれを那津が知っているのか。
(解らない…なんで…?)
あれほど突き放しておいて、いきなり事の発端のデータと
芽依が気に入ったネックレスをわざわざ郵便で送ってきた那津の真意が見えない。
だけどそこで、すごく悪い予感がした。
『もしかして……っ』
そう思い立ってからはもう、無我夢中で走って
那津の家を目指した。
(もしかして……もしかして……!!)
嫌な予感が当たってしまわない事を祈って
焦りと疲れからくる鼓動が気持ち悪くさえ感じてしまう。
なんとかロビーに着いた芽依は、管理人の呼び出しボタンを何度も乱暴に叩いた。
(お願い…早く!)
すると、スピーカーから管理人の嗄れた声が聞こえてきた。
「はい」
『あの!森山の家に用なんです!開けて下さい!』
「森山…?あぁ、あの森山さん?男の子の」
『はい!私同級生なんです!』
「あの森山さんなら、つい先日引っ越されましたよ。今は空き部屋ですが」
『そ……んな………』
そこで芽依はガックリと膝をついて呆然とした。
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