
片想いの行方
第37章 ひとつだけの宝物
「………ヒメ……
全然見てないうちに、すごく大人っぽくなってるね……
知らなかった……」
「……………!」
美和の濡れた瞳が、俺をじっと見つめる。
……やばい………
心臓がドクっと鳴る。
こんなに近くで美和を見るのは、かなり久しぶりだ。
俺はその目から、思わず視線を外す。
「……そりゃそうだろ。
クラスが変わってから、ほとんど会わなかったし、たぶん1度も喋ってない」
「……そうだね……」
美和は切なそうな表情になる。
………美和にはそう言ったけど。
俺は蓮と美和が付き合ってからも、離れた場所から2人の姿を見ていた。
……見るつもりは無かったし、もう気にしないようにしようと、敢えて避けていたつもりだった。
だけど
自分の意思とは裏腹に
俺が見つめる先にはいつも、蓮に向かって微笑む美和の姿があった。
