
隠れて甘いkissをして
第70章 2人の心
その場所は、レストランから10分ほど車で進んだところにあった。
山道の途中で車を降りると、隼人が私にコートを羽織り、マフラーを巻いてくれる。
私は周りの景色を見て歩きながら、あの日の記憶を思い返していた。
仕事でミスをした日に、会社の前で待っていてくれた彼が、私をここに連れてきてくれたんだ…。
「あの時、堂々と有名人ヅラして名乗ったのに、由宇が無反応だったのにはヘコんだなー」
隣りで歩く隼人が、面白そうに笑った。
「………/// そうだったね…」
あの時はまだ、隼人が誰なのかも、どんな事をしてる人なのかも、何も知らなかったんだっけ。
あれから……半年近く経ってるんだ。
あっという間だなぁ……
その後はお互いに何も話すことなく歩いて
私達は頂上まで来た。
あの時と同じように、風がふわっと舞う。
夏の始まりの頃とは違い、冷たい空気が漂っていた。
