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いつまでも、何年経っても切なくて

第20章 悲しい嘘のはじまり

『どう...したの?』


「兄貴に頼まれて迎えに来たんだ...

なんかいい匂いがする」

そう言って勝手に靴を脱いで上がってしまった


『ちょっと待ってよ!』


増えつつある達ちゃんの物に気付かないでほしい
咄嗟にそんな考えが頭をよぎった


スタスタと居間に入って
オーブンの中を覗き込む響


「おー俺の大好きなチーズケーキ!
俺のために焼いてくれてるのか?」


『別に響のためだけじゃないよ...
涼ちゃんも遥さんもみんな好きだから』


そんなことを言っているうちにケーキが出来上がった


私がオーブンを開けるとすぐ近くに顔を寄せてきて響もケーキの出来具合を見ている


なんだかドキドキするから
そんなに近寄らないでほしい...


少し冷まそうとテーブルの上に置いて響にお茶を出そうと冷蔵庫に向かった時


背中の方から「うんめーなこれ」と聞こえた


まさかと思って振り返ったら


私が作ったチーズケーキが
ねずみに喰われたみたいになっていた


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