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華のしずく~あなた色に染められて~

第22章 【夕桜~華のしずく~】其の壱~飛花~

 振り絞るような一之進の声も帰蝶の耳には、しまいまで届かなかった。帰蝶は震える声で、唇をわななかせた。
「何と、お義父君を秀継様の家臣が」
 あまりのことに声も出ない。傍らの茜がワッと泣き伏す。一之進がめざとくそれを見て、一喝した。
「これ、お仕えするそなたがかように見苦しう取り乱して何とするのじゃ。そなたは奥方様をお慰めするのが務めであろう」

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