
華のしずく~あなた色に染められて~
第22章 【夕桜~華のしずく~】其の壱~飛花~
必死の形相で敵をくい止める時治は主君の声なき声を聞き取り、秀吉がついに最期のときを迎えたのを悟った。時治は近くにあった燭台から素早くろうそくを手にし、それを使って部屋に火をかけた。炎は障子から襖へと次々に息をつくまもないほどの早さで燃え広がってゆく。敵兵たちが息を呑んで後ずさり、やがて、散り散りに後退していった。
その時、ふいに突風が強く吹き抜けた。開け放たれた障子の向こうには庭が見える。時治がふと眼をやると、庭先の桜の枝が風にざわめいていた。
その時、ふいに突風が強く吹き抜けた。開け放たれた障子の向こうには庭が見える。時治がふと眼をやると、庭先の桜の枝が風にざわめいていた。
