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華のしずく~あなた色に染められて~

第22章 【夕桜~華のしずく~】其の壱~飛花~

 愛用の金扇(きんおうぎ)をすっと手前にかざし優雅な身のこなしで謡い舞うその姿は、さながら昔(いにしへ)の光源氏の青海波を見るが如き見事さ、あでやかさであった。五十歳という当時としてははや老齢の域にさしかかった齢(よわい)をいささかも感じさせぬ確かな身のこなしである。
 一方、襖の外で主君の最期のときを守り抜こうとして壮絶な覚悟を定める時治には、瞼に秀吉の華麗な舞姿があたかも浮かぶようであった。

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