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華のしずく~あなた色に染められて~

第22章 【夕桜~華のしずく~】其の壱~飛花~

「殿ッ」
 寝所となっている座敷の襖が開いた。狩野派の絵師の手になる、鷹が翼を広げて松の枝に止まる勇壮な図柄を背景に、着流し姿の秀吉がすっくと佇んでいる。
 秀吉は時治の顔を見た。いつもは沈着な側近が蒼ざめているのを見、彼は瞬時に事の重大さを悟った。大方、時治は秀吉がめざめる前に表へ物音の正体を確かめにいったに相違なかった。

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