テキストサイズ

華のしずく~あなた色に染められて~

第11章 【紫陽花~華のしずく~】二

 短い静寂があった。
「京(みやこ)へ帰りたいか? 帰りたいなら、帰してやっても良いぞ」
 唐突な秀吉の言葉に、明子の涙が止まった。秀吉の意図が計りかねた。
「はっきり申して、今の将軍家に昔日の力はない。人質など、もう要らぬ」
 明子は大きく息を吸い込んだ。今、言わねば、きっと一生後悔する。
「いやでございます」
 明子は泣きながら首を振った。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ