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華のしずく~あなた色に染められて~

第11章 【紫陽花~華のしずく~】二

 雨が、降っていた。儚い、頼りなげな絹糸のような雨は明子の心の奥底まで降り込んでくるようだ。冷たい雨に打たれる紫陽花は今、鮮やかな蒼に染め上げられている。深い深い蒼は、明子の想う男の瞳の色。
 けれど、男は明子を愛してはくれない。それどころか、彼は明子を見てさえいない。彼の眼はいつも目の前にあるものを通り越して、はるか先を見つめている。

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