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華のしずく~あなた色に染められて~

第8章 【雪の華~華のずく~】 三

「そなたが二ノ丸に何ゆえおるのじゃ」
 突き放したような物言いに、徳姫は蒼ざめた。
「お母上さまに梅の花を差し上げようとお持ち致しました」
 それでも、やっとの想いで応えたが、恐怖のあまり声が慄えるのは隠しようもない。徳姫は我ながら奇妙なことだと思った。信晴を見る度に、言い知れぬ怖ろしさを感じてしまうのに、何故か彼から眼を逸らせられない。信晴を怖いとおそれつつも、いっそう彼に魅かれずにはおれないのである。

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