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華のしずく~あなた色に染められて~

第8章 【雪の華~華のずく~】 三

 相手と視線が合った時、徳姫は叫んでいた。
「信晴さま」
 何と、あろうことか、その人物は信晴その人であった。
「申し訳ございませぬ、私、粗忽者で」
 徳姫の眼に熱いものが滲む。これでまた、余計に嫌われてしまうかもしれないと思えば、辛かった。
「こんなところで思いもかけぬ者と逢ったものだ」
 案の定、信晴は冷たい笑いを浮かべ、皮肉げに口の端を引き上げている。

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