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華のしずく~あなた色に染められて~

第4章 【華のしずく】~試練~

「殿」
 珠々はふいに切なさが胸に突き上げてきて、信成を見上げた。
「殿、私は殿の妻、たとえ去れと申されてましても、最期まで殿のお側を離れませぬ」
「しかし、そなたをも巻き添えにするには、いかにも忍びぬ」
 信成がやつれた顔で言った。ここ半月ほど見ぬ間に、信成は随分と痩せたようである。頬の回りの肉がそげ落ち、まるで別人のように憔悴していた。

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