テキストサイズ

華のしずく~あなた色に染められて~

第30章 【剣(KEN)~華のしずく~】 闇に喚ばれし者

 岡っ引きの留五郎が無念の顔で立っていた。相当急いで駆けてきたものか、息が荒い。
「龍伍、殺(や)っちまったんだな、お前」
 留五郎の龍伍を見る眼には憎しみも嘲りもなく、ただ深い哀しみがあるばかりだった。
 龍伍は黙って、両手を留五郎に差し出した。 留五郎もまた何も言わずに龍伍の手に縄を掛けた。血の海の中に、忘れ去られたように長剣が転がっていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ