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華のしずく~あなた色に染められて~

第30章 【剣(KEN)~華のしずく~】 闇に喚ばれし者

 龍伍は足許に転がる二つの死体を無表情に見下ろす。ハッと我に返った時、浅太とあの殺人鬼―若い娘を手込めにしては次々に殺していた―坂本隼人が物言わぬ骸(むくろ)となって横たわっていた。
 龍伍が手にした剣も、彼自身も返り血を浴びて、血まみれだった。生臭い血の匂いに、龍伍はくらりと目眩を覚え、額を片手で押さえた。ふらつく身体を辛うじて意思の力で支える。
「何てこった。遅かったか」
 聞き覚えのある声に、龍伍はうつむけていた顔を上げた。

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