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禁断兄妹

第54章 由奈~終わりの始まり②~


「まるで刑事か探偵みたいな言い方ね‥‥私は犯人なの?」


予想通りの展開

ふふっ、と笑いが込み上げた私に


「‥‥否定しないんですか」


「友達だもの‥‥ここに遊びに来たことも、あったかもね」


修斗の鋭い視線が横顔に刺さるのを感じるけれど
私は噂でしかないこの記事に
恐れも後悔も感じてはいなかった。


「嬢、過ぎたことはもう何も言わない‥‥俺が甘かった」


息を吐き
自分に言い聞かせるように修斗が呟く。


「でもこれからは、一ノ瀬柊と会っては絶対に駄目だ。この記事だけでもまずいのに、もし撮られてこんな見出しをつけられてからでは、遅い」


オーナーと同じことを言うから
同じように
はいわかりましたと言ってその場を収めればいいのだろうけど


「友達に会って何が悪いの‥‥誰にも迷惑をかけてないのに」


アルコールが
私の胸に燻っていた火を煽った。


「嬢。仕事を失うリスクを、真剣に考えて欲しい。こんな男の為に、今までの努力を水の泡にする気ですか?」


こんな男

その一言が
耳にとげを残す。


「柊君は今日本で一番人気と実力がある男性モデルよ。人間的にも素晴らしい人だわ」


「人間的にも?‥‥とてもそうは思えない」


「あんたは本当の柊君を知らないからよ」


今の彼は迷いの中でもがいているだけ
本当の瞳の色を私は知っている。


「そんなもの知りたいとも思わないし、知ったところで俺の考えは変わらない‥‥天狗になって女を食い散らかしてる盛りのついたクソガキ‥‥それが一ノ瀬柊だ」


遠慮の欠片もない冷酷な声
赤い目を見られたくはなかったけれど
顔を上げずにはいられなかった。

私を冷たく見下ろす三白眼が細く光る。

 
「人は変わる‥‥嬢が信じている一ノ瀬柊は、もうあの日の日記の中にしかいませんよ」

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