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禁断兄妹

第14章 地獄への入り口


無数のストロボがたかれたかのような
俺の目の前に
フラッシュバックのように蘇る
あの頃の記憶

病院のベッドで
いつ来るかわからない父さんの見舞いを
いつも待っていた母さん

母さんはそんなこと口には出さなかったけれど
俺はわかっていた

面会時間ギリギリで
父さんが駆け込むようにやって来ると
母さんはとても喜んで
本当に嬉しそうな顔を見せた

お仕事忙しいのにごめんね
早く良くなって家に帰るから

弾んだ声で
そう言っていた

俺はそんな時
気を遣って席を外していたけれど
二人がいつもキスしていたのを知ってる

父さんは俺には見せないような優しい顔で
あまり見舞いに来れないことを詫びて
早く良くなれって
涙で濡れる母さんの頬を
慈しむように撫でていた

今でも鮮明に覚えている
何度も目にした
あの愛に溢れた光景

あれは
なんだったんだ

いったいなんだったんだ‥‥

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