
禁断兄妹
第89章 禁断兄妹
訪れた静寂の中
俺は雪の中に座り込んだまま
天を仰いだ。
───お前さえいなければ、夏巳は今も生きていたんじゃないのか‥‥?!───
───あらゆる手を尽くしたのか?お前らは夏巳の側にいながら、一体何をしていたんだ‥‥?!───
「‥‥勝手なこと言いやがって‥‥」
後から後から落ちて来る雪
陰り始めた空
もうすぐ日が暮れる。
───どうして夏巳を死なせた‥‥どうしてもっと大切にしてやらなかった‥‥───
身勝手で一方的な言葉の奥に渦巻いていた
行き場のない怒りと悲しみ
後悔
母さんが死んだのはもう二十年以上も前のことなのに
KENTAROはまるで昨日のことのように怒り狂い
嘆き悲しんでいた
それが俺の心を
今も揺さぶっている。
───うるせえ!!俺は、俺は‥‥っ───
───やめろ!!───
彼はこれからも心を閉ざし
苦しみながら生きていくのだろうか
KENTAROとのもみ合いで
手から落としていた父さんの手紙
拾い上げ胸元へ戻すと
冷気が忍び込んだ。
俺はこんなところまで
何をしに来たのだろう
傷つけあう為に
来た訳じゃないのに
「寒いな‥‥」
寒い
凍えそうだ
赤くかじかんだ両手
握り合わせ
息を吹きかけた。
俺には
光のごとく生きてゆける強さがある
今だって
口笛さえ吹ける
けれど
こんな時
誰かに側にいて欲しい
愛する人に
側にいて欲しい
萌
こんな時
お前が側に
いてくれたら───
「‥‥ゅうーーー‥‥」
誰かに呼ばれた気がして
我に返った。
「‥‥柊ーーー‥‥」
柊
俺の名を呼ぶ声
幻聴
違う
聞こえる
柊
繰り返す
何度も
「‥‥柊ーーー!!‥‥どこにいるのーーー!!‥‥」
「‥‥萌‥‥?」
立ち上がった俺の白い視界に飛び込んできた
ダスティピンクのコート
萌
「萌‥‥!!」
