
禁断兄妹
第86章 時を越え運ばれし手紙、それは運命の書
出会った頃の夏巳は小学一年生で、高校三年だった俺とは十一歳という歳の差があった。
俺にとって夏巳はずっと可愛い妹でしかなかったけれど、美しく成長してゆく夏巳が思春期を迎え、家庭教師よろしく勉強を教えていた俺に、異性としての好意を寄せ始めたことを感じると、ときめくような嬉しさを覚えた。
そして俺と夏巳は、夏巳の高校入学と同時に交際を始め、夏巳の高校卒業を待って、結婚することを決めた。
俺達の結婚には皆が賛成し、祝福してくれた。ただ一人、謙、君だけを除いて。
君は俺と夏巳が交際を始めた時から、俺は認めない、と不快さを隠そうとしなかった。そんな君だったから、十八歳という若さで夏巳が結婚することに、大反対したね。
歳の差があり過ぎる、何故そんなに結婚を焦る、お前の母親のようなことになる、よく考えろ、君は夏巳にそう言ってたね。
恐れ知らずの若さと類いまれな美貌を持っていた君は、誰に対しても、そう年上で恩があるはずの俺に対しても、何も臆することなく接し、真っ向から異を唱えた。
夏巳は、自分の幸せを願ってくれているからこその反対なのだと、とても心を痛めていた。兄とも父とも慕う唯一無二の君に認めてもらいたくて、何度も話をしたはずだ。俺も一緒に三人で話をしたこともあったな。それでも君は、俺達を冷ややかにあしらい、反対の姿勢を崩すことがなかった。
正直に言おう、謙。
俺はそんな君の態度に、耐えがたい怒りを感じていた。
いや、もっと正直に言えば、俺は昔から君が嫌いだった。
幼いとはいえ、男と男だ。俺に対する君の侮蔑的ともとれる冷淡な態度や視線を、俺は昔から嫌悪していたんだ。お互い様だろうがね。
