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禁断兄妹

第71章 君が方舟を降りるなら


不意に聞かれて
一瞬
息が止まる。


「あ‥‥たぶん、元気だと思います‥‥私は自分の部屋にいることが多くて、あまり顔を合わせてないので‥‥」


自分の声が
小さくなっていくのがわかった。


「そうですか‥‥」


お兄ちゃんは
家にいる間はほとんどリビングにいるけど

私は勉強すると言ったり早く寝ると言ったりして
自分の部屋にいることが多くなっていた。


「寂しいんじゃ、ないですか‥‥?」


寂しい‥‥?


「いえっ、あの、私は勉強が遅れてるので、部屋で集中してやりたいと思って自分からそうしてるんです。もし寂しくなったら兄がいるリビングに行けばいいだけの話ですし───」


自分の意思でそうしてるの

寂しいだ
なんて


「お兄さんが寂しくないのかな、と思って言ったんですが‥‥ほら、あなたのことをとても可愛がってらっしゃるから」


「あ‥‥」


「萌さんは勉強に忙しいんですね。頑張り屋さんですね」


私を見るお兄ちゃんの瞳が
胸に甦る。

暖かくて優しくて
時折炎のように熱くて

その光は
私の胸の中に差し込んで
全てを露わに照らしそうになる。


「別に、頑張ってる訳では、ないです‥‥」


寂しいのは
動かないお兄ちゃん

それとも

逃げている私

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