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禁断兄妹

第63章 聖戦



携帯は
もういい

お財布
教科書

全部あげてもいい


だけど手紙

手紙だけは


気持ちを奮い立たせ
必死に伸ばした手

パン、と
音をたてて
払われた。


「おとなしくしとけ」


地の底から響くような
低い声

携帯に落としていたはずの視線が
私に
突き刺さっていた。


手の甲が当たった指先が
じんじんと熱く痺れて

目の前が
涙で
歪んで

ぐちゃぐちゃ

何も
見えない。


「ああ、いい顔だ」


冷たい声と共に
また携帯が向けられる気配に

背けようとした顎が
突然
強く掴まれて

あまりの恐怖に
反射的に目を閉じた。


「‥‥自己紹介がまだだったな。橘修斗だ。霧島組の若頭をしている」


閉じた目の前で
声がする。

かかる息に
湿度を感じるほど近く

橘と名乗った男の顔が
すぐそこにある。


「君の兄‥‥一ノ瀬柊に、強い恨みを持つ者だ。八つ裂きにしてもまだ足りないほどにな」


呪いのような
深く
低い声


顎をつかんでいた手の指が
一本
二本

強く噛み合わせていた歯を
こじ開けるように

口の中に
ねじ込まれる。


「きゃ‥‥っ!!や、やめ、うぐッ!!」


「舌を噛まれたくはない」


指でこじ開けられた口の中に
熱いものが
一気に流れ込む。





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