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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第2章 壱の巻

 左大臣の姫は世にも醜い姫、その上、女だてらに小難しい漢籍などを読みふけり、あまつさえ気色の悪い虫どもをさも愛おしげに眺めている―、そんな噂が真しやかに語られれば、当の噂の姫に恋文を送ろうなどという勇気のある公達はそうそうはいまい。
 それに、実は公子にとって不名誉極まる噂はもう一つあった。というのは、公子がいまだに月のものもない不具、つまり片輪者の姫であるというものだ。

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