さようならも言わずに~恋は夢のように儚く~
第2章 壱
三歳の砌、往来を走っていた荷馬車に撥ねられ、そのときの怪我が因でこのようになったのだと、娘は、さらりと話した。どうやら、馬車を操っていた男が昼日中から大量の酒を呑んで酔っ払っていたことが原因の事故であったようだが、娘は己れの苛酷な宿命(さだめ)にも、当の馬車を操っていた男へも何の遺恨も抱いてはいない様子で淡々と話すのだった。
これだけ歩くのに難儀する様子では、他人(ひと)には言えぬ苦労も哀しみもあったろうに、娘の晴れやかな笑顔には不幸の翳りはなかった。
これだけ歩くのに難儀する様子では、他人(ひと)には言えぬ苦労も哀しみもあったろうに、娘の晴れやかな笑顔には不幸の翳りはなかった。
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