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さようならも言わずに~恋は夢のように儚く~

第2章 壱

 一陣の風が吹き抜けた。先刻感じたものよりは、はるかに強い風が嘉門の袴の裾を揺らす。と、ひらひらと、嘉門の前に何かが舞い落ちてきた。縦長の小さな紙片のように見えるそれを拾い上げると、どうやら栞らしい。しかも、きれいな押し花をあしらった栞で、上の方に小さな穴が開いて、紅い紐が結んである。
 栞に使われているのは、白粉花(おしろいばな)であった。
 嘉門は拾った栞についた土を軽く払った。

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