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さようならも言わずに~恋は夢のように儚く~

第2章 壱

 それにしても、我が身がこれほど女々しいというか、優柔不断な男だとは当の嘉門自身でさえ考えてもみなかった。ただ、ひと言、訊ねれば良いことなのに、現実が怖くてできないでいる。今日だって、道場を出たそのときから、胸は嫌が上にも高まっているというのに、娘の前では何食わぬ顔で通り過ぎようとしているのだから。
 自分の不甲斐性を心の中で呪いながら歩いていたそのときである。

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