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さようならも言わずに~恋は夢のように儚く~

第2章 壱

 とはいえ、嘉門も石澤家の当主であるという己の立場は自覚している。石澤家は五百石取りではあるが、初代将軍家康公の御世から連綿と続いてきた譜代の名門だ。母が実家よりはるかに格下だと嘆きながらも、婚家の存続には血眼になっているその気持ちもまた道理だし、嘉門の代でその血が絶えるようなことにでもなれば、亡くなった父にも申し訳が立たない。

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