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来世にて

第2章 前世

「 ‥」

「まさかあの男が中国から大返しをするとはな。あの男何か知っておったな。でなくばこの日にちで大返しなどかなうまい。」

家康は苦い顔で呟いた。

そして振り向き光秀に向き直る

「では光秀殿、手筈通りに。大儀でござった。」

家康は馬に跨がり鞭を入れ
振り向きもせず去っていく。
そのあとを供が数人付き従う。

「殿と家康殿が仕組まれたこととはいえ、この先どうなるか。」

家康の後ろ姿を見つめながら光秀は呟く。

「国のためと思えばこその大芝居だが、果たしてほんに善きことであったのか。
わしの縁者達はいかがなろうぞ。」

その言葉は森のなかに吸い込まれていった。

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