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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第13章 山茶花~さざんか~ 其の参  

 父親に似て、優しい子だ。まだ肩揚げも取れぬ粗末な着物を着て、甲斐甲斐しく千汐の看病をする。わずか五歳の子どもが飯を炊いたり、包丁で器用に菜を刻んだりする。どころか、裏店の女房連中に混じって、井戸端で洗濯物までこなした。
 真平は千汐母子が暮らす長屋でも評判の孝行息子だ。眼鼻立ちはやはり、曽太郞のものを色濃く受け継いでいるような気がする。

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