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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第12章 山茶花~さざんか~ 其の弐 

「ああ、ちょいとね。うちの人とここで待ち合わせしてるのさ」
 曽太郞とは夫婦ではないけれど、所帯を持とうと約束しているのだから、あながち嘘にはならないだろう。そう自分に言い訳しながら、千汐はすらすらとさも真実であるかのように言う。
 苦界の水に染まってからというもの、随分と嘘をつくのが上手くなった。
―本当にあの男は、こんなあたしで良いのかしら。
 ちらりと、そんな想いがよぎる。

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