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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第12章 山茶花~さざんか~ 其の弐 

 存外に整った容貌は苦み走っていて、精悍さを漂わせている。どことはなしに翳りがあって、こんな男を女が好むことはよく判っていた。
 しかし、眼がいけない。暗い光を宿した双眸は荒んでおり、男がどのような生活を―けして他人は言えぬ裏の世界とも拘わっていることも物語っている。下駄職人だという話もどこまでが本当か知れたものではない。

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