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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第12章 山茶花~さざんか~ 其の弐 

 あの男の真心を信じたい。
 千汐を支えるのは、男と過ごした一夜の想い出と、けして変わらぬと誓った男の心だけだった。
 その夜、千汐は和泉橋のたもとに佇んでいた。以前は仕事場―つまり、男の袖を引く場所は何もここだけと決めているわけではなかったのだが、曽太郞と出逢って以来、夜になると自然に脚がここに向いているのだ。

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